最近、「景観」について考えさせられることが多い。景観と聞いて、多くの人は景勝地として有名な場所や、そこからの眺めを思い浮かべるのではないだろうか。例えば、山岳、里山、海岸、都市など。そもそも景観とはなんだろうか。
本来は Landschaft(ドイツ語)の訳語であり、人間の視覚によってとらえられる地表面の認識像と説明されることが多い。例えば、水田、林、農道、集落、石垣などの各要素を、相互に関係しあうひとかたまりとして認識したものが里山の景観だといえるだろう。
2005年施行の景観法で、景観行政団体が住民の意見を反映させて規則を伴った景観計画を策定できることとなった。2014年3月31日時点で、高知市や四万十市などを含む429箇所で景観計画が策定されている。
一歩進めた概念が文化的景観だといえるかもしれない。「地域における人々の生活または生業および当該地域の風土により形成された景観地で わが国民の生活または生業の理解のため欠くことのできないもの」と定義されている。特に重要なものについては、重要文化的景観として全国で47件(20150126 現在)が選定されている。
景観生態学は、生態的プロセスにおける空間配置の重要性を追求する。つまり、単にいくつかの景観要素が存在するということだけではなく、組成や空間配置が違っていたら生態システムに与える影響も異なると考え、景観の解析や保全活用検討などを進めていく。
このように「景観」は見ためだけではなく、地域、風土、生業、生態系などを考えるうえで、必須かつ身近で、機能を有する概念だといってもよい。土佐清水市大岐で大規模太陽光発電所の設置計画が持ち上がり、「景観壊れる」との不安の声もあった(20150621 高知新聞)。
その後、予定地を所有する企業が地元説明会で、国に提出した事業への同意書を撤回する方針を示した。地元説明会に参加させていただいたが、参加された皆さんが見ためだけではない景観を充分に意識されていたのが印象的だった。説明会の最後、今後のことに話題が及んだ際に景観計画を策定してはどうかと提案させていただいた。
四万十川沿いにも大規模太陽光発電所計画があるとのこと。以前の新聞記事を検索すると、四万十市観光課は「四万十川条例は開発を禁止するのではなく、景観と環境を守りながら折り合いをつけるための規則。この課題(太陽光発電所と景観の整合性)を機に、守るべき景観についてあらためて考える」とし、高知県環境共生課も「再生可能エネルギー施設について真剣に考える時期に来ている」との認識を示している。いずれにしても「景観」が鍵になりそうだ。
変化が起こりそうな時点で探知できることがまず大切だと思う。そのためには「いつもの状態」や「自然な変化」について知っておく必要があり、普段から気をつけていないと難しい。景観計画を考えることは、自然環境だけではなく地域経済や防災など多視点で協議し、長い目で自分たちが住む地域の価値向上のために必要なことを洗い出す良いきっかけになるのではないだろうか。
最後に、陸上のことはいつも見ている人がたくさんいるけれど、水の中の変化は探知されにくいように思う。普段から地道に観察を続けて、今の状態や変化を発信していくしかないなあ。
20150629 高知新聞 寄稿