こいのぼりうなぎのぼり

黒潮町の空を泳ぐカツオノボリ

黒潮町伊与木川の空を泳ぐカツオノボリ

三級浪高魚化龍。さんきゅう なみたかうして うお りゅうとかす。中国を流れる黄河を舞台にした言い伝えである。中国夏王朝を開いた禹(う)王が黄河の治水をした際、竜門山に激流の三段の滝(竜門三級)ができた。これを登りきった魚は、頭上に角が生え竜となって雲を起し天に昇るという。ここから「登竜門」の語が生まれたそうな。

端午の節句にこいのぼりを立てる風習もこの言い伝えに由来する。江戸時代、家紋のついた旗やのぼりを立てて祝う武家の風習が庶民に広がり、鯉の滝登りをイメージしたこいのぼりが挙げられるようになったらしい。

今年も四万十町十和地域に、恒例の「こいのぼりの川渡し」が登場した。四万十川の青と、空の青の間に色とりどりのこいのぼりが悠々と舞い、木々の新緑と美しいコントラストをなしている。5月16日まで。地元の十川体育会が、川の両岸に張った往復1.3kmのワイヤに約500匹のこいのぼりを結んだ(20150422高知新聞)。

四万十町ウェブページをみると「こいのぼりの川渡し」は少年たちのこんな言葉から始まると記されている。「最近は僕らぁが大きくなったけん、家で鯉のぼりを上げてくれん!」こんな会話を聞いた当時の体育会のお兄さんたちは「よっしゃ。それやったら、おまんらあの、こいのぼりを持ってこい!おれらあがまとめて上げちゃうけん!」と、昭和49年に50匹程の鯉のぼりを川の上に渡した。そんな体育会のお兄さんから子供達への心のこもったプレゼントが「こいのぼりの川渡し」の始まりである。

こいのぼりの川渡しを見ると、何とも爽快な気分になる。宿毛市を流れる松田川では親水公園から荒瀬山にかかる壮大なこいのぼりをみることができる。梼原町の白谷川では、約3900匹の小型こいのぼりが飾られ、山あいを鮮やかに彩っている。奈半利町では、海岸を泳ぐこいのぼりやフラフが飾られているそうだ。仁淀川では「紙のこいのぼり」が水中を泳ぐ。和紙の生産が盛んないの町ならでは。不織布でできた鯉が仁淀川に放流される。5月5日までとのこと。

興味深いことに、最近はさまざまな魚種が「のぼり」になっているようだ。岩手県北上川では「うなぎのぼり」や「なまずのぼり」が春風のなかを泳ぐ。こいのぼり約300匹のなかに、2匹の「うなぎ」と「なまず」がいるそうだ。なまずは幸福を呼ぶ縁起物とされ、観光客に大きくなった福を届けるとのこと。岐阜県長良川や栃木県那珂川では「あゆのぼり」、大分県大野川では「どんこのぼり」が掲げられる。

海水魚としては、やはり高知県黒潮町伊与木川の「かつおのぼり」。最初は数旗から始まったそうだが、現在はこいのぼりも含めて100旗以上がはためいていて圧巻だ。他には青森県大間の「まぐろのぼり」が有名だが、沖縄県八重瀬町では「とびうおのぼり」まで出現したそうだ。

魚好きとしてはなんだか嬉しい。つい余計なことも考えてしまう。川をさかのぼる力でいえば、コイよりもウナギのほうが強いだろう。そしてもっと遡上力をもっているのはボウズハゼ。小さな稚魚が口と腹びれのふたつの吸盤を使って、ろくに水も流れていない垂直の壁をぐいぐいと登っていく。「ぼうずはぜのぼり」があったら最強なのになあと。

皆さん、ゴールデンウィークいかがおすごしですか。爽快に泳ぐこいのぼりやかつおのぼりをまだ見ていない方は、各地の水辺へぜひ!

20150504 高知新聞 寄稿

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