今日から6月。
沈下橋から川を覗くと、産卵期を迎えたオイカワが派手な求愛ディスプレイを繰り返し、河岸にはゲンジボタルが光コミュニケーションを取りながら飛び交っている。気がついたら、もう夏なのだと思い知らされる。
新型コロナウィルスに世界が翻弄される2020年。ヒトの社会活動は大変な事態になっているが、季節は例年と変わりなく進んでいく。今年はいったいどんな夏になるのだろう。
気象庁が5月25日に発表した3ヶ月予報によると、今夏は暖かい空気に覆われやすく、平均気温は平年よりも高い見込みとなるそうだ。先月5日には四万十市江川崎で30.3℃の真夏日を記録したが、あの41.0℃を記録した13年のように暑くなると熱中症の心配もある。特に今年は病院に行くことを減らしたい。
名古屋工業大学の小寺紗千子氏らが19年に発表した熱中症搬送者予測シミュレーションに関する論文によると、高齢者の熱中症リスクは、当日の暑さだけではなく連続3日間の気象条件が影響するらしい。搬送者数は発汗量との相関が高く、梅雨明け後の熱中症リスクは、夏場に比べて2倍以上であることも立証されたそうだ。暑さにまだ体が慣れない今月から、脱水症状にならないよう水分補給に気をつけたいものだ。室内で読書に勤しむのも良いかもしれない。
「学問は活物(いきもの)で書籍は糟粕だ」と南方熊楠は『平家蟹の話』の中で記している。糟粕とは酒粕のこと。「書に見当たらぬことも間違ったことも多く、大家碩学の作述には至極の臆説もあるは、上述平家蟹に関する西人の諸説でもわかる」とのこと。
10歳の頃に5年間かけて『和漢三才図会』全105巻を記憶し筆写したのを初めとして、古今東西の書物を読み漁り、蔵一棟に収まらないほどの書簡類を残した熊楠がいうからこその重みである。書籍は大切。そのうえで、学び問いかけるフィールドに出よう。
それには魚釣りが最適ではないかな。天候や地形を把握し、川なら水位、海なら干満や潮流の変化をよむ必要がある。魚の生態を学び、餌や仕掛けを工夫し、これで良いかと絶えず問いかける楽しい切磋琢磨の世界だ。
自慢ではないが、筆者は釣りが下手だ。魚と釣りのことしか考えていなかった小中学生の頃にピークがあったようで、最近は全然ダメ。潜って撮影をしたらおもしろそうとか、後のビールが美味しそうとか集中力散漫極まりない。
10歳で釣り歴6年の小松君(高知新聞5月21日)にはまったくかなわない。「ラインはPE0.6号、ハリスは1.5号で」と1年以上前の仕掛け情報を挨拶がわりに、「釣りに行きとうて、まいまいしゆう」毎日とのこと。今後の期待大である。
全長1.0m、重さ65kgのカンパチを釣った小松さん(高知新聞5月23日)にはただただ驚きである。室戸沖にはこんな超大物がいて、しかも竿であげられるのかと。
今年の夏は、釣りに出かけよう。3密を避け、天候や熱中症に充分注意して。そして学び問いかければ、一生に一度のオドロキに出会うかもしれない。
20200601 高知新聞 寄稿