竹蛇籠魚道のなかにたくさん入り込んでいたヒラテテナガエビ
資源量の減少で2018年度から7カ月間の禁漁期間(9月-翌3月)を導入しているテナガエビ漁について、高知県内水面漁場管理委員会は2月17日、今季も全河川で同期間を禁漁とすることを決めた。「まだ資源が回復するまでには至っていない」として禁漁継続を県が提案。委員からも異論は出なかった。(2020年2月18日 高知新聞)
高知県全域のデータはもっていないけれど、四万十川流域のテナガエビ類2種については、2007年から高校の川研修のために観察を始め、2012年5月からは多くの方々にご協力いただきながら毎月定点定量調査を継続している。
2007年に梼原川合流点から下流の四万十川や黒尊川で潜水観察した時点では、河床の石礫を転がすとヒラテテナガエビやミナミテナガエビがよく飛び出してきた。
2012年以降の定点定量調査では、年を追うごとに確認個体数が減少し、2018年もしくは2019年に最低値を記録した。もしくはと記したのは、地点によって異なるためである。2018年が最低値であった地点では翌年ほんのわずか増加した。
この増加要因が冒頭にある禁漁期間導入の効果なのか、単なる個体群変動誤差にすぎないのか、今後増えるのか減るのかは、調査を継続して結果をみないとわからない。愚直ではあるが続けるしかない。少なくともあと5年間以上は必要だろうと感じている。
そもそも河川生物資源を回復させるには、捕獲圧減少と生息環境復元の両方が必要である。どちらか一方ではバランスを欠く。捕獲制限か環境復元かではなく、捕獲制限も環境復元も大切なのだ。できれば同時期に実施することが効果につながるポイントでもある。
大規模な環境復元は予算的にも困難であるが、小規模な事業であれば実施可能かもしれない。そのひとつが「小さな自然再生」とよばれる試みである。小さな自然再生とは、小規模で速やかにかつ低コストで行う取り組みのこと。その条件は次の3つである。①自己調達できる資金規模であること②多様な主体による参画と協働が可能であること③修復と撤去が容易であること。
公共事業とは異なり、興味ある人が発案し、資金調達や法的許認可を経て、友人知人らとああでもないこうでもないと試行錯誤しながら進める自然再生事業だ。
やってみるとことのほか楽しい。随時変化する河川流況など、自然を相手にすると、筋書き通りにいくことはまずない。じっくり観察し、やってみて、修復や改良を加えるのである。
小さな自然再生は、全国各地で広がっている。2015年3月には日本河川・流域再生ネットワークから「できることからはじめよう―水辺の小さな自然再生事例集」が発行された。2020年3月末には同第2集が公表され、近日中に印刷製本版も配布されるとのこと。
同ネットワークのホームページからPDF版を無料ダウンロードできるので、興味ある方はぜひ。全国のおもしろい人たちが工夫を重ねた事例や必要不可欠な知見がたくさん記載されている。
川は身近なワンダーランドだ。不思議さが内在する活きた川が増えてくれることを望む。
20200406 高知新聞 寄稿