いまさら?いまから

四万十川の自然遡上ニホンウナギ

ニホンウナギ自然遡上個体 四万十川にて

 

「岸辺をコンクリートで固める護岸などをした割合が高い河川や湖沼ほど、ニホンウナギの漁獲量の減少が激しい」との解析結果を東京大大気海洋研究所などのグループが16日までにまとめた。(20140417 高知新聞)

この発表の元となった原著論文(Itakura et al.,2014)を入手して読んでみると、比較に用いられた18河川とその護岸率(%)は次のとおりだった。球磨川(61)緑川(45)大淀川(35)荒川(28)矢作川(27)木曽川(26)菊池川(25)久慈川(25)利根川(24)肱川(24)高梁川(23)江の川(22)信濃川(19)天竜川(18)吉野川(16)那珂川(15)北上川(13)四万十川(5)。 他に9カ所の湖沼についても比較されているが、海と隔絶しており放流ウナギのみに依存している湖沼も含まれているため、ここでは言及対象から除く。

これら18河川の護岸率とニホンウナギ漁獲量減少率が相関関係にあったという解析結果が発表の基礎にあるようだ。通常、「相関関係がある」からといって「因果関係がある」とは言えない。けれど、コンクリートで固められた河川にウナギがたくさんいるとは思えず、コロバシ(ウナギを捕える筒状の漁具)をしかけようとも思わない。おそらく、川でウナギを捕まえたことがある人は、この解析結果を直感的に受け入れたことだろう。

「いまさら?」「そんなことは何十年も前から知っちょった」というのが新聞記事をみた近所の方の大多数の反応だった。そんなことは当たり前のことという意見もうなづける。しかしながら、当たり前だと思われることをしっかりデータで示すのはなかなか至難のことなのだ。まずは日本各地の主要なウナギ漁場河川を対象とした、客観的でわかりやすい論文が公表されたことが大切だと思う。このような論文を基礎として、いまから良い動きに結びつくかもしれない。

「護岸だけの問題やないろ」という反応もあった。確かに。一般的に、動物が絶滅または減少する要因は(1)生息地の消失(2)生息環境の悪化(3)移動経路の分断(4)侵略的外来生物の影響(5)高い捕獲圧の5つとされる。

四万十川で生物観察をしている際に、川漁師の方々から「河床の石が減った」「流量が少なくなった」「コロバシに使おうにも餌にする川エビがおらん」といった多くの話を教えてもらう。ウナギが減ったのは、このように多くの要因が複合的に影響しているはずだ。保全に向けて、流域をひとつのカタマリとしてとらえ、5つの要因を考えながら、できることから実践していくことが必要だろう。

そうこうしているうちに、次の動きがあった。「高知県は今年10月から来年3月にかけての半年間,成魚の漁獲を禁止することを決めた」(20140421 高知新聞)。宮崎、鹿児島、熊本県に次いで、4番目の禁漁措置となる。すぐに結果がでることではないが、持続的に生業が成り立つ仕組みとなることを期待している。

「いまさら」ではなく「いまから」。特に高知県内の流域なら充分回復する基礎力があると勝手に考えている。すぐに大きなことができなくても、試行錯誤しながら小さな自然再生から始めるのもよさそうだ。

いまから、いまから。

20140428 高知新聞 寄稿

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