夏が終わり、柿が色づく季節となった。夜、川に行くと、稚エビが列をなして上っていく光景をみることができる。体長は15-30mmほど。この大きさで数十kmも川を遡上するのだから恐れ入る。
川エビはいつも川にいると思われがちだけれど、多くの種類は川と海を行き来して生活している。通し回遊性と呼ばれる生態特性で、川で母エビが卵を抱え、卵から孵化したゾエア幼生が川を流下して汽水海水域に入り、塩分のある環境で幼生から稚エビに育ち、再び川をのぼる。
川エビの仲間には、ヌマエビ類、スジエビ類、テナガエビ類など多くの種類が含まれる。高知県内の居酒屋で「川エビの唐揚げ」を注文して出てくるのはテナガエビ類であることが多い。県内に生息する3種類のテナガエビ類のうち,ヒラテテナガエビとミナミテナガエビが通し回遊性で、主な漁獲対象はこの2種である。
高知県西部ではテナガエビ類の漁獲量減少が著しい。昨年には県レッドリスト2017改訂版でテナガエビ類が準絶滅危惧種として選定された。詳細が記された県レッドデータブック2018(動物編)は今年10月に発行される予定となっている。
保全研究を進めるために川漁師の方々にお聞きしたところ、3年間禁漁や、繁殖期(5-9月頃)禁漁という意見もあった。繁殖終期で稚エビの遡上期でもある9月から禁漁期間を設定する案もあり、今回の高知県の規制はこれに該当する。
現状はどうだろうか。四万十川西部漁協で教えていただいた川エビ入荷量をみると、例年1500-2500kgで推移していた年入荷量が、2009年に2491kgを記録したのち連続的に減少し、2016年には約38kgにまで激減した。2017年には約257kgとやや増加したが、18年には約46kgと再び低下してしまった。
筆者らは、特別採捕許可のもとでテナガエビ類2種を捕獲し、計測後その場で再放流する定点定量調査を毎月実施しているが、ここでもほぼ同様の傾向が出ている。
例えば、四万十川の口屋内地点では、2013年に計1100個体以上を確認したが、2014年と2015年は300個体程度と減少した。2016年にはミナミテナガエビの遡上稚エビが増加して800個体以上となり安堵したのもつかの間、2017年には300個体台、2018年(4-9月)は180個体台と再び低下してしまった。四万十川の佐田地点でも2017年に稚エビが増加したが、2018年は2015年や2016年の個体数よりも減少してしまった。
さてどうすればよいか。モニタリングに基づく漁獲規制の継続検討と同時に、生息空間の保全も必要だろう。幼生から稚エビが育つ汽水環境や、遡上できる水域連続性の再生、間隙の多い河床を維持する流域土砂管理が求められる。
川エビが川にいなくなることは、川エビだけの問題ではないのだ。ウナギなどの魚類にとっては大切な餌資源である。ヒトにとっても同じ。特に高知では水産、観光、学習資源であり、食文化にもなっている。川エビは、川とヒトの関わりを指標しているといってもよい。泳いで採って食べて生業にもできる。そんな豊かな川がたくさんある自慢の高知県をこれからも。
20181001 高知新聞 寄稿