変化を探知するには

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12月1日、窓の外から「クルゥー クルゥー」という鳴き声が聞こえてきた。空を見上げるとツルが舞っていた。とりあえず手持ちのデジタルカメラで撮影し、確認すると25羽のナベヅルだった。

ナベヅルは、シベリアの湿地帯で繁殖し、主に日本で越するり鳥である。世界の推定個体数は約11,500羽で、そのうち9割にあたる約1万羽が鹿児島県出水地方で越冬する一極集中状態となっている。越冬地では主に穀類、昆虫、小型水生生物を食べ、水深10-20cm程度の河川中州や干潟などを塒にするとのこと。

江戸時代までは各地に飛来していたが明治以降は激減した。そのため現在では、文化財保護法で「鹿児島県のツルおよびその渡来地」などが特別天然記念物となっているほか、国際自然保護連合(IUCN)レッドリストで絶滅危惧II類、環境省レッドリストで絶滅危惧II類、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の国際希少野生動植物種に指定されている。

保護対策は、まず一極集中の解消である。越冬地が集中していると重篤な感染症が発生した場合に絶滅リスクが高まってしまう。そこで、出水地方以外に複数箇所の越冬地を確保することが最重要課題となっている。

今年は、この国際的に希少なナベヅルが四国に集団飛来した近年例のない年となった。

高知、愛媛、徳島の3県で飛来数が計約300羽にのぼり、県内では四万十市、宿毛市、四万十町、土佐市、南国市、香南市の6市町村で飛来が確認され、安芸市でも目撃されたという。[20151201 高知新聞]

四万十市への飛来数は,四万十つるの里づくりの会のウェブページに公開されている(高知野鳥の会、日本野鳥の会高知支部、地元協力者、国土交通省との連携)。10月29日の29羽に始まり、11月にはいると毎日100羽以上が現れ最多239羽となった。16日には17羽と激減したが20日には再び100羽以上が飛来。ところが、12月1日には0羽となり、2日以降は7羽から22羽で、15日から21日までの確認数は0となっている。

12月7日には保護団体などが記者会見を開き、四万十つるの里づくりの会の武田正会長は「100羽単位の飛来は驚くべき数だった。何とか四万十市で越冬してもらうため、市民全員でツルを静かに見守ってほしい」と訴えている。[20151208 高知新聞]

本稿を書くにあたり、日本野鳥の会高知支部の木村宏さんに電話にて教えていただいた。ナベヅルの飛来数が減少した要因は11月15日の狩猟解禁と12月1日の落ちアユ漁解禁によって人が近づきすぎたためだろう」「現時点では県内にはいないが愛媛や徳島に計130羽くらいがいて、また戻ってくる可能性もある」「戻ってきた個体が越冬するかもしれないので、みかけたら近づかずに見守ってほしい」とのこと。

12月1日に私がみかけたナベヅルは、落ちアユ漁に驚いて四万十川から逃げ出した群れだったのかもしれない。その時は25羽が多いのか少ないのかもつかめなかったが、ようやく一連の動きがわかってきた気がする。

いま目の前で起こりつつある変化は、いつも観察している方の蓄積された知見があるからこそ探知できる。法的に保護対象とされたうえで、確認数が公開されていることも地域主導で見守っていく効果的な基盤となるのではないだろうか。

ツルは昔から縁起の良い鳥として人々に親しまれてきた。高知新聞の声ひろばにも投稿されていたように、ツルの動向を気にされている方も多い。どうかまた県内に戻って越冬してもらいたいものである。縁起の良い新年に向けて。

20151228 高知新聞 掲載(加筆修正)

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