養蜂のススメ

時期,林縁部や道路沿いに木箱が並んでいる風景をよくみかける。四万十川観光に訪れた方から「あれは何ですか」「お地蔵さんか何かを祀っているですか」と聞かれたこともある。いやいや。これら箱は,巣分かれをしたミツバチ群れ(分蜂群)をとらえようとする待ち箱である。

ヒトがミツバチを飼い,蜂蜜を採取しようとする養蜂歴史は長く,紀元前2400年ころ築かれたエジプト神殿に描かれた絵が現存する最古証拠となっている。日本では「日本書紀」(643年)に最初記述があり平安時代には諸国から宮中へ蜂蜜献上記録が「延喜式」(905-927年)などにみられる。江戸時代には養蜂・採蜜技術が発達し,明治時代以降に西洋式技術が導入された。

ミツバチ属は世界で9種存在し,主な養蜂対象種はセイヨウミツバチとトウヨウミツバチである。日本在来ニホンミツバチはトウヨウミツバチ1亜種にあたり,大陸と日本列島が陸続きであった頃(約2-20万年前)に大陸から渡ってきたではないかと推測されている。セイヨウミツバチは1877年に人為的に導入された。

ミツバチは人類にとって重要な生物であり,詳細な研究が進んでいる。Karl Ritter von Frisch博士は,働き蜂が豊富な蜜源方向と距離を巣仲間にダンス行動で教えることができるという革命的な発見でノーベル賞を受賞された。Thomas D. Seeley博士は,分蜂群が新しい巣を選ぶ際に実行する民主的意思決定プロセスを詳細に調べあげ,「ミツバチの会議:なぜ常に最良の意思決定ができるのか」という書籍とともに,「リーダーが集団考えに及ぼす影響をできるだけ小さくする」など教訓を記されている。

英大学チームがハチは球を転がして目的地まで運ぶという自然中ではしない仕事を見まねで学習し,より効率的にこなせるように改善する能力があると研究結果を米科学誌サイエンスに発表した(201702227 高知新聞)。

上記の原著論文にあたってみると,こチはミツバチ科マルハナバチで,昆虫が予想外に複雑な学習能力をもつことを示す結果だという。

筆者は近所方にお世話になりながら2008年に養蜂を始めた。最初はセイヨウミツバチ,現在はニホンミツバチを飼育している。蜂蜜へ食欲を動機として始めただが,ミツバチ生態,巣箱構造や設置場所など,なんとも探究心をかきたてられている。文献で読んだはずミツバチダンスを目当たりにして初めて理解することができ,あまり興味がなかった陸上植物についても巣箱周囲2-3kmにある蜜源植物を季節ごとに気にするようになった。皆さんも養蜂を始めてみてはいかがだろう。楽しい日々が訪れる。

養蜂を始めようとする方は届出義務があることに注意されたい。2012年に養蜂振興法が改正され蜜蜂飼育を行う者は毎年1月に都道府県知事に蜂群数や飼育場所などを届け出なければならない。ただし,反復利用可能な蜂房を利用せず防疫及び蜂群配置調整上支障がない場合などは届出不要となっており,高知県では「県内において野生蜜蜂飼育を行う場合で,当該野生蜜蜂が自主的に巣及び蜂房を形成する方法(重箱式養蜂箱を使用するもを含む)で飼育を行う場合」には届出義務を除外される。許可ではなく届出であり,もし迷った場合には届出をしておくほうが無難だ。

養蜂に挑戦する方々成功を祈ります。

(20170320 高知新聞 掲載分を一部修正)